株式会社トライリスタ

介護でお悩みの方要介護と要支援の違いについて

要介護と要支援は、どちらも介護保険サービスを受ける上での区分ですが、具体的にどのような違いがあるのかを理解している方は意外と少ないかもしれません。「要介護」と「要支援」の違いや、それぞれに適用されるサービス、申請方法、対象となる状態などについて、分かりやすく解説します。

介護保険制度について

まず、「要介護」や「要支援」という言葉の意味を理解するためには、介護保険制度の仕組みを簡単に知っておく必要があります。

介護保険制度は、2000年に施行された制度で、加齢や病気により日常生活に支障が出てきた高齢者に対し、必要な介護サービスを受けられるようにするための公的な保険制度です。40歳以上の国民が保険料を支払い、介護が必要になったときに申請を行うことで、一定の条件のもとにサービスが提供されます。

要介護と要支援の定義

それでは、要介護と要支援の定義について見ていきましょう。

要支援

介護保険制度における「要支援」は日常生活に支障はあるものの、常時の介護は必要ないという軽度の支援対象者に該当します。主な目的は、自立支援と介護予防です。介護保険では「要支援1」と「要支援2」の2段階があり、それぞれに応じて利用できるサービスの内容や頻度が異なります。

要支援1

基本的な日常生活は自分でできるが、一部に支援が必要。

身体の状態 ・基本的には自立して生活できる
・一部の動作(買い物、掃除、外出など)に困難がある
・軽度の認知機能低下がある場合も
・体力の低下により、筋力アップや転倒予防の支援が必要な状態
できること ・食事は自分でできる
・排泄は基本的に自立している
・入浴は、ほぼ自立。滑りやすい箇所などに不安あり
・掃除・洗濯などの家事は体力が続かない、うまくできない
・外出はバランスが悪く、転倒の危険あり
利用されるサービス例 ・介護予防訪問介護(生活援助中心)
・介護予防通所介護(デイサービス:軽運動や機能訓練)
・福祉用具貸与(一部のみ)
・住宅改修(手すり設置など)

目安:日常生活は自立しているが、「将来の要介護状態」を予防するための支援が必要な段階。

要支援2

要支援1よりも支援の必要度がやや高い。

身体の状態 ・基本的な生活は可能だが、継続的・定期的な支援が必要
・要支援1よりも体力や認知機能の低下が進んでいる
・転倒や閉じこもり、認知症の進行などのリスクが高い
できること ・食事は自力で可能だが、調理が難しい
・排泄は基本的には自立しているが失敗が増えてきた
・入浴は転倒が心配で一人では困難
・掃除・洗濯などの家事は一人では体力が持たず、援助が必要、うまくできない
・外出は外出頻度が減少、閉じこもりがち
利用されるサービス例 ・要支援1と同様だが、回数や内容が増える傾向(例:デイサービスの回数が週2回に増える)
・より継続的な支援を受けられる
・地域密着型サービス(例:運動教室、認知症予防教室)も活用

目安:すでに日常生活に複数の支障が出始めており、要介護状態への進行リスクが高い段階。

要介護

「要介護」は、日常生活全般において介護が必要な状態を指します。食事、入浴、排泄、移動といった基本的な動作に常時介助が必要な場合が多く、介護保険では「要介護1」から「要介護5」までの5段階に分かれています。

要介護1~5は、要介護認定調査と主治医意見書をもとに、介護認定審査会が総合的に判断し、認定します。

評価の基準には、「身体機能」「生活機能」「認知機能」「行動障害」「コミュニケーション」「社会生活」などが含まれ、それぞれ点数化されて要介護度が決定されます。

要介護1

部分的に介助が必要

身体の状態 ・基本的な日常生活は自立しているが、一部に介助が必要(例:入浴時の手助け)
・軽度の運動障害や認知機能の低下が見られる場合あり
できること ・食事、排泄はほぼ自分でできる
・短距離であれば歩行可能
介助の必要な場面 ・入浴、掃除、調理など
・転倒予防のための見守り
利用されるサービス例 ・デイサービス(週数回)
・訪問介護(掃除や調理の手伝い)
・福祉用具の貸与(手すり、歩行器など)

目安:自立はしているが、生活に少し手助けがいる段階。

要介護2

日常生活に中程度の介助が必要

身体の状態 ・立ち上がりや歩行などに支えが必要
・軽度から中程度の認知症があることも
できること ・食事は自力で可能な場合もある
・排泄は部分的な介助が必要
介助の必要な場面 ・入浴は全介助が必要な場合も
・外出時の付き添い、見守り
利用されるサービス例 ・デイサービスや訪問介護の頻度が増加
・通所リハビリテーション
・ショートステイ(短期入所)の利用

目安:介護なしでは生活が難しい場面が増え、常時支援が必要になる。

要介護3

ほぼ常時の介助が必要

身体の状態 ・日常動作の大半で介助が必要
・中度の認知症や運動障害があることが多い
できること ・食事は介助があれば可能
・歩行は困難、車椅子の使用が多い
介助の必要な場面 ・排泄、入浴、移動すべてにおいて介助が必要
・日中・夜間ともに見守りが必要なことも
利用されるサービス例 ・訪問介護(身体介護中心)
・通所介護(週5日以上)
・夜間対応型訪問介護や小規模多機能型居宅介護の検討

目安:家庭だけでの介護がかなり困難になり、外部サービスの利用が増える。

要介護4

全面的な介助が必要

身体の状態 ・寝たきりに近い生活をしていることが多い
・認知症の進行や脳血管障害などによる重度障害あり
できること ・食事、排泄、着替えなど自力で行うのはほぼ困難
・会話も成り立ちにくくなることがある
介助の必要な場面 ・常に介護者の手助けが必要
・夜間の排泄や体位変換も含む
利用されるサービス例 ・訪問看護や訪問入浴
・特別養護老人ホームの入所検討
・医療機関との連携が必要なケースも多い

目安:常時介護が必要。家庭での介護は限界に近く、施設入所が選択肢に。

要介護5

常時全面的な介護が必要な最重度

身体の状態 ・完全に寝たきり、または重度の認知症
・意思疎通が難しく、嚥下障害や経管栄養が必要な場合も
できること ・自力ではほとんど何もできない
・反応が乏しい場合もある
介助の必要な場面 ・食事介助(経管栄養)
・体位変換、吸引、排泄介助(おむつ交換)
利用されるサービス例 ・特別養護老人ホームや介護療養型医療施設
・訪問看護・訪問診療・医療的ケア
・介護ベッドや吸引器など医療機器の導入

目安:24時間体制での介護が不可欠。家族介護は非常に困難。

要支援と要介護の違い

判定の目的と基準

介護保険を利用するには、まず市区町村の窓口に申請し、要介護認定を受ける必要があります。その後、「要支援」か「要介護」かが認定されます。

認定の判断は「認定調査」「主治医意見書」「コンピュータによる一次判定」と「介護認定審査会による二次判定」を通じて総合的に行われます。

利用できるサービスの違い

要支援の主なサービス(予防給付)
  • 介護予防訪問介護(生活援助が中心)
  • 介護予防通所介護(デイサービス)
  • 介護予防訪問リハビリテーション
  • 介護予防福祉用具貸与・住宅改修

特徴としては、自立支援や介護予防が目的であるため、サービス内容は比較的軽度です。

要介護の主なサービス
  • 訪問介護(身体介護含む)
  • 通所介護(入浴・食事・リハビリなど)
  • 短期入所(ショートステイ)
  • 特別養護老人ホームや介護老人保健施設への入所
  • 福祉用具の貸与、住宅改修

要介護は、日常的な介護の支援が目的であり、サービスの範囲もより広く、量も多くなります。

ケアプランの作成者

  • 要支援者は「地域包括支援センター」の保健師や社会福祉士がケアプランを作成します。
  • 要介護者は「居宅介護支援事業所」のケアマネジャーがケアプランを作成します。

状態の変化による区分の見直し

要介護・要支援の認定は一度決まれば永続するわけではありません。一定期間ごとに「区分変更申請」ができ、状態が悪化すれば「要支援から要介護へ」、逆に改善すれば「要介護から要支援へ」といった見直しが行われます。

これは、適切な支援をその時々の状態に応じて提供するための重要な仕組みです。

介護保険制度における要介護の要支援の支給限度額(月額)

2024年度の介護保険制度における「サービス利用限度額(月ごと)」は以下の通りです。
※1割負担の場合の上限額。実際には利用内容や地域で異なります。

要支援

要支援区分 月額支給限度額
要支援1 約 50,030円/月
要支援2 約 104,730円/月

要介護

要支援区分 月額支給限度額
要介護1 約 166,920円/月
要介護2 約 196,160円/月
要介護3 約 269,310円/月
要介護4 約 308,060円/月
要介護5 約 360,650円/月

必要な支援を正しく理解することが大切

「要支援」と「要介護」は、単なる分類ではなく、その人に必要な支援の種類と量を明確にするための制度的な仕組みです。

違いを正しく理解することで、本人や家族にとって適切なサービスを受けやすくなり、介護の負担を軽減することにもつながります。市区町村の介護保険窓口や、地域包括支援センターに相談することで、より具体的な支援策を見つけることができるでしょう。

一覧に戻る

このページの先頭へ