株式会社トライリスタ

介護でお悩みの方老老介護・認認介護の現実と課題

日本は世界に類を見ないスピードで超高齢社会に突入しています。2025年を迎え、団塊の世代がすべて75歳以上となり、後期高齢者の人口が急増しました。そうした中、深刻化しているのが「老老介護」や「認認介護」と呼ばれる介護のかたちです。
これらは、介護を必要とする高齢者を、同じく高齢者が世話する、あるいは認知症の高齢者を別の認知症高齢者が介護する状況を指します。かつては考えられなかったこうした現象が、いまや特別なケースではなくなっているのです。老老介護・認認介護の現状や課題、社会全体で取り組むべき対策について考察します。

老老介護とは何か

老老介護とは、65歳以上の高齢者が同じく高齢の配偶者や親兄弟などを介護する状況を指します。厚生労働省の調査によれば、要介護認定を受けた高齢者を介護する人のうち、約3分の2が60歳以上です。特に75歳以上が介護者となっている「超老老介護」のケースも増加しており、体力・気力の限界を迎えた高齢者が介護に疲弊しているのが現状です。

老老介護が生じる主な要因には以下のようなものがあります。

  • 核家族化と少子高齢化によって、若い世代が同居していない
  • 地域のつながりの希薄化
  • 介護保険制度を十分に活用できていない、または利用に抵抗がある
  • 「家族が面倒を見るのが当然」という意識

老老介護は、肉体的・精神的・経済的な負担が大きいにも関わらず、支援を求めにくいという側面があります。そのため、介護うつや心中、虐待、介護殺人といった悲劇的な事件も後を絶ちません。

認認介護とは何か

認認介護とは、認知症を患っている高齢者同士が、互いにまたは片方がもう片方を介護している状況を指します。近年の調査では、認知症を抱える介護者が全国で増加傾向にあり、特に高齢夫婦や高齢の親子の間で多く見られます。

認知症は、記憶障害や判断力の低下などを伴い、日常生活に大きな支障をきたす病気です。にもかかわらず、本人が病気を自覚せず介護を担っている場合も少なくなく、医療機関や福祉サービスに接続されないまま孤立してしまうこともあります。

このような状態は、介護の質を大きく低下させるだけでなく、介護を受ける側にも危険を及ぼしかねません。たとえば、服薬のミスや食事の不適切な管理、外出中の事故などが起きやすくなります。

老老介護・認認介護がもたらすリスク

身体的・精神的負担の増加

高齢者は体力の低下に加え、自身の健康管理が難しい状況にあります。そこへ介護という重責が加わることで、慢性的な疲労やストレス、さらには鬱症状を引き起こしやすくなります。

経済的困窮

年金収入のみで生活する高齢者世帯は多く、介護用品や医療費、福祉サービスの利用料金などが家計を圧迫します。結果として介護サービスの利用を控える悪循環に陥りがちです。

孤立化・虐待リスクの増大

高齢者同士の閉じられた環境での介護は、外部との接点を減少させ、孤立感を深めます。これが虐待や心中といった深刻な事態につながるケースも報告されています。

社会としての対応策

介護サービスの拡充と柔軟化

介護保険サービスの利用促進や、訪問介護・ショートステイなどを柔軟に活用できる仕組みの整備が求められます。また、地域包括支援センターなどが介護者の状況を継続的に把握する体制づくりも必要です。

高齢者への認知症チェック体制の強化

認認介護を防ぐには、早期発見と診断が不可欠です。定期的な認知症チェックの促進や、地域の医療機関と連携した「認知症サポート体制」の構築が重要です。

家族・地域の理解と支援

「介護は家族の責任」といった固定観念を改め、地域全体で支える意識を育むことが不可欠です。自治体やNPO、ボランティア団体などが連携し、高齢者が孤立しないよう支援ネットワークを広げていく必要があります。

介護者支援の充実

介護者への相談窓口の周知、リフレッシュのための「介護者休養支援」、介護に関する知識を学ぶ講座の開催など、介護者の心身のケアも大きな課題です。

制度や地域の力を借り、互いに支え合える社会の構築

老老介護・認認介護は、社会全体の問題として捉えるべきテーマ

高齢化は避けられない現実であり、その中でどのように人間らしく生き、支え合えるかが問われています。

介護は一人で背負いきれるものではありません。制度や地域の力を借りながら、互いに支え合える社会の構築が求められています。「支える人」もまた「支えられる」べき存在であるという認識が、今こそ必要とされているのです。

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