家族が介護を担う「在宅介護」や、専門施設に頼る「施設介護」など、介護の形が多様化していく中で、介護に関する支援制度を知っておくことは、負担を軽減するために非常に重要です。介護を支える代表的な公的制度「介護保険制度」を中心に、自治体の助成、医療・福祉制度、家族向け支援など、さまざまな支援制度についてわかりやすく解説します。

介護保険制度とは
2000年に施行された「介護保険制度」は、40歳以上の国民が加入する公的な保険制度です。高齢や病気により介護が必要になったときに、介護サービスを必要に応じて利用できるように設計されています。
対象者
第1号被保険者 | 65歳以上の人(介護や日常生活に支援が必要な場合) |
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第2号被保険者 | 40歳以上65歳未満の医療保険加入者(加齢に伴う特定疾病により介護が必要な場合) |
利用の流れ
- 市区町村へ要介護認定を申請
- 認定調査・主治医意見書の提出
- 要支援1~2または要介護1~5に区分
- ケアプラン作成
- サービス利用開始
利用できる主なサービス
訪問系サービス | 訪問介護、訪問入浴、訪問リハビリ |
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通所系サービス | デイサービス、デイケア |
短期入所 | ショートステイ |
施設サービス | 特別養護老人ホームなど |
その他 | 福祉用具貸与・住宅改修 |

高額介護サービス費制度
介護保険の利用において、1カ月の自己負担額が高額になった場合、一定の上限を超えた金額が払い戻される制度です。
上限額(例)
世帯の所得状況 | 自己負担上限(月額) |
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一般的な所得層 | 約44,400円 |
住民税非課税世帯 | 約24,600円 または、15,000円 |
低所得の個人世帯 | 約15,000円 |
市区町村に申請を行うことで、超過分が支給されます。

介護休業制度(仕事と介護の両立支援)
働きながら介護を行う人のために、雇用保険制度に基づく介護休業制度があります。
内容
・対象家族1人につき、通算93日間まで休業可能(3回まで分割可)
・介護休業給付金が支給(休業前賃金の67%)
介護休暇
介護休業とは別に、年5日(対象が2人以上なら10日)まで取得可能。1日単位または時間単位で使える職場もあります。

介護用品・住宅改修の助成制度
もし食事中に激しいむせや咳き込みが見られた場合は、以下のように対応しましょう。
福祉用具の貸与・購入助成
介護保険を利用して、手すり、歩行器、車椅子、介護ベッドなどの福祉用具を原則1割(所得により2~3割)でレンタルできます。
また、ポータブルトイレや入浴補助具など一部用具は購入費の補助もあります(年間10万円まで)。
住宅改修費助成
段差解消や手すりの設置、スロープの設置など、自宅内のバリアフリー化にかかる改修費について、20万円を上限に9割(または8割・7割)補助が受けられます。

自治体独自の介護支援制度
多くの自治体では、介護保険制度を補完する形で独自の支援制度を設けています。例として以下のような支援があります。
配食サービス
高齢者の自宅に栄養バランスのとれた食事を届けるサービス。安価で提供され、安否確認も兼ねる。
緊急通報システム
自宅に設置したボタンを押すことで、緊急時に警備会社や救急へ通報できる装置。高齢者の一人暮らしを支援。
紙おむつの給付・補助
要介護者に対して、紙おむつ代の一部を助成する制度。所得や要介護度によって条件あり。
認知症支援事業
認知症の早期発見や家族の相談支援など、地域包括支援センターと連携して行う取り組み。
※詳細は自治体ごとに異なるため、お住まいの市区町村へご相談ください。

認知症やひとり暮らし高齢者への見守り支援
見守り・訪問事業
高齢者宅への定期訪問・電話連絡などにより、安全確認を行う制度。ボランティアやNPO、民生委員が関わることも。
徘徊高齢者のSOSネットワーク
認知症による徘徊の際、家族からの通報を受け、地域全体で早期発見・保護を目指すネットワーク型支援。

生活支援・家計支援制度
介護により収入が減るケースや生活が困難になる家庭への支援も用意されています。
高齢者の生活保護制度
生活が困窮している高齢者世帯は、介護が必要な場合でも生活保護の対象となる可能性があります。介護扶助や住宅扶助などを含む包括的支援が行われます。
徘徊高齢者のSOSネットワーク
認知症による徘徊の際、家族からの通報を受け、地域全体で早期発見・保護を目指すネットワーク型支援。

地域包括支援センターの役割
介護に関する相談窓口として、各地域に「地域包括支援センター」が設置されています。
主な機能
専門の職員(社会福祉士、保健師、ケアマネジャーなど)が常駐し、無料で相談できます。
- 要介護認定の申請支援
- 介護保険の相談・手続き
- 高齢者の総合的な生活支援(健康、福祉、権利擁護など)
- 認知症や虐待の対応窓口

制度を上手に活用して介護を支える
介護は家庭だけで抱えるには大きな負担がかかります。しかし、国や自治体による多様な支援制度を知って活用することで、その負担を大きく軽減できます。
特に、介護保険制度を中心に、自分の状況に合った制度を組み合わせて利用することがポイントです。介護が必要になったときは、一人で悩まず、まずは地域包括支援センターや市町村の福祉窓口に相談することをおすすめします。