株式会社トライリスタ

お役立ちコラム高齢者が暮らしやすいバリアフリー住宅のポイント

高齢化が進む日本社会において、高齢者が安心して暮らせる住環境の整備は急務となっています。その中でも、バリアフリー住宅は、自立した生活の支援や介護負担の軽減において非常に重要な役割を果たします。本記事では、高齢者が安全かつ快適に暮らすためのバリアフリー住宅の設計ポイントや工夫について、具体的にご紹介します。

バリアフリー住宅とは?

バリアフリー住宅とは、年齢や障害の有無にかかわらず、誰もが安全で快適に暮らせるように設計された住まいのことです。特に高齢者にとっては、身体機能の低下や病気などにより、日常生活の中で「段差」や「手すりのない場所」などが大きな障壁になります。

バリアフリー住宅の主な目的は以下の3点です。

  • 転倒や事故の防止
  • 自立した生活の維持
  • 介護のしやすさの向上

高齢者の生活上の課題とリスク

高齢者が日常生活で直面する主なリスクには、以下のようなものがあります。

転倒リスク

高齢者の事故で最も多いのが「転倒」です。自宅内での事故の約80%が転倒に関係しており、骨折や寝たきりの原因になることも少なくありません。

トイレや入浴時の困難

加齢により筋力が低下し、立ち上がりや姿勢保持が難しくなるため、トイレや浴室での移動・操作が困難になります。

認知症や視覚・聴覚の低下

認知症を患う高齢者にとっては、「場所を覚えにくい」「物の位置がわからない」といった問題も生じやすく、視覚障害や聴覚障害も合わせて考慮する必要があります。

バリアフリー住宅に必要な設計ポイント

ここでは、住宅全体におけるバリアフリーの設計ポイントを具体的に紹介します。

段差の解消と床材の工夫

室内外の段差をなくす 玄関、廊下、各部屋の境目など、すべての場所で段差をできる限りなくすことが基本です。
滑りにくい床材を選ぶ リビングや廊下はもちろん、浴室やキッチンも滑りにくい床材を使用しましょう。
カーペットやマットの段差も注意 小さなマットでもつまずきの原因になるため、できれば敷かないほうが安全です。

廊下・ドア・通路の広さ

車椅子の利用を想定 将来的な車椅子の利用も考慮し、廊下の幅は少なくとも90cm以上、ドアの幅は80cm以上が理想です。
引き戸の導入 開き戸は身体を引いて開ける必要があるため、力の要らない引き戸を採用することで、開閉が楽になります。

トイレの設計

広めのスペースを確保 介助が必要になった場合に備えて、トイレは広めに作っておくと安心です。
L字型手すりの設置 立ち上がりやすい位置にL字型の手すりを設置しましょう。
便座の高さ 座ったり立ち上がったりしやすいよう、便座の高さを40~45cm程度に調整するとよいでしょう。

浴室の工夫

滑りにくい床材と排水設計 水に濡れても滑りにくい素材を使用し、水はけを良くする設計が重要です。
浴槽のまたぎ高さ 浴槽の高さは40cm以下が理想です。
シャワー椅子・手すりの活用 座って洗えるよう、安定したシャワーチェアや固定手すりを設けます。

寝室とその周辺

ベッドの高さ 立ち上がりやすい高さ(床から40〜45cm)が推奨されます。
照明スイッチの位置 寝たままでも手が届く位置に照明やナースコール(呼び出しボタン)を設置。
緊急時の動線確保 寝室からトイレや玄関までの動線を短くし、夜間でも安全に移動できるよう足元灯を設けると効果的です。

介護する側の視点も大切

バリアフリー住宅は、高齢者本人のためだけでなく、介護する側の負担軽減にもつながります。介護する人の視点から見ても、以下のような点が重要です。

介助スペースの確保

ベッドサイドやトイレ・浴室では、介助者が無理なく動けるスペースを確保することが求められます。

介護機器の設置スペース

将来的にリフトや介護ベッド、ポータブルトイレなどを設置する可能性がある場合は、それらを設置できる広さ・配線・床の強度を備えておく必要があります。

バリアフリーリフォームの補助制度

高齢者向け住宅改修には、公的な補助制度も充実しています。

介護保険による住宅改修費支給

要介護・要支援認定を受けている方は、最大20万円までの住宅改修費の9割(所得により7~9割)が支給されます。対象となる改修例は以下の通りです。

  • 手すりの取り付け
  • 段差の解消
  • 滑り防止の床材変更
  • 扉の引き戸化
  • トイレの洋式化

自治体の独自補助制度

各自治体でも、独自の補助制度や助成金が用意されている場合があります。介護保険の対象外であっても、条件によって補助が受けられることがあるため、市区町村の窓口に相談してみましょう。

将来を見据えた住まい選び・家づくり

高齢者が快適に暮らすためには、「今」だけでなく「将来の変化」も見越した設計が重要です。

  • 自立から介護期への移行に対応できる設計
  • 同居家族との共生空間の工夫
  • 在宅医療や訪問介護に対応可能な間取り

たとえば、「今は元気でも、数年後には介護が必要になる可能性がある」と考え、最初から可変性を持たせた設計にすることが理想です。

安心・安全・快適な生活のために

バリアフリー住宅は、高齢者の「できることを支え」「できなくなったことを補う」ための大切なインフラです。段差の解消や手すりの設置といった基本的な工夫から、将来を見据えた空間設計まで、多くの視点で住まいを見直すことが求められます。

「いつまでも自宅で安心して暮らしたい」― そんな願いをかなえるために、バリアフリーの考え方は、高齢者の尊厳と生活の質を守る力強い味方になるのです。

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